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なんで都会なんですか?と逆に聞いてみたい種子島の薬剤師・田中孝明さん

種子島は、九州本土から約40キロほど南に位置している、鹿児島県の離島です。種子島宇宙センターを中心とした宇宙開発や、鉄砲伝来の地としても有名なこの島は、人口が約3万人弱と、離島のなかでは比較的栄えているほうに属します。

この島に、離島ファーマシストネットワーク(通称、リファネット)という、離島薬剤師に関する情報発信をしている薬剤師さんがいらっしゃるという情報をキャッチしまして。これは是非お話を伺わねば!と思い、さっそく現地に赴いて飲み取材をさせていただいたのですが、実際に会ってみたら、なんというか色々な意味で想像以上のアツい兄貴だったのでした……。

取材日:2017年8月18日
インタビュアー:鈴木裕也

プロフィール

田中 孝明さん

1984年、鹿児島県鹿児島市生まれ。2009年、東京薬科大学卒業後、鹿児島市に本社を持つとまと薬局グループに入社。2013年、のぞみ薬局公立病院前店・薬局長(現職)に就任。特技はバスケ。好物はビール。好きな絵本は「しょうぼうじどうしゃじぷた」。

なんで種子島で働いてるんですか?

マンゴービール。ビールっていうかカクテルですねこれは

マンゴービール。ビールっていうかカクテルですねこれは

それが特に無いんですよね、理由。

……え?

離島で薬剤師の募集があるんだけど、働きませんか?って言われて「いいっすよ」って言って、来た。……ってだけなんですよ。だから、いつも「なんで離島で働いてるんですか?」って聞かれたら、特に理由ないです、って答えてます。

お声が掛かったから離島に来た、って感じなんですか。

きっかけはそうなんですけど、でも、つまんなかったら、島から出ればいいわけじゃないですか。ですけど、面白いから出る理由がないんですよね。

東京の大学を出てから、9年ですか。ずっと種子島で働かれてるわけですよね。もともと、離島とか僻地で働いてもいいかなって感覚をお持ちだったんですか。

僕の中で「どこで働いても一緒」っていう感覚があるんですよ。薬剤師って、ライセンス職だから仕事はどこでもできるじゃないですか。別に都会にいようが田舎にいようが、やること一緒じゃないですか?

いや、それはそうですけど……離島って不便だな、とか思わないんですか?

うーん、別に……だって、土日とか普通に飛行機でどこへでも遊びに行けますし、買い物だってアマゾンでピッてやれば何でもすぐ届きますし。だから僕、薬剤師が都会に住む理由を逆に教えてほしいんですよね。都会って、家賃は高いですし、人は多すぎますし、自然は少ないですし。逆に聞きたいって、いつも思うんですよ。何で都会なんだろう?って。

まあ、分かりますけどね。僕も仮に薬剤師になってて、独身だったら、たぶん石垣島とかに行ってると思います。妻と子供がいたらちょっときついですけど。

ですよね? 離島とかそういうところって、今おっしゃってたように独身のときとか、制限があんまり無いときじゃないと、気軽には来れないと思うんですよね。都会って、住もうと思えばいつでも住めるじゃないですか。

そうですね。

たとえば結婚したら、奥さんが都会じゃないと無理とか、子供の教育が〜、とかそういうのがあるかも知れないですけど、そのときはそのときで島を出ればいいわけですから。だからそういう制限が何も無いときに、もし興味があるなら軽い気持ちでポーンって来ればいいと思うんですよ。

七色観望台。ここ、めっちゃくちゃ眺め良いんですけど、この写真だと良さが伝わらんね......。

七色観望台。ここ、めっちゃくちゃ眺め良いんですけど、この写真だと良さが伝わらんね……。

種子島に来るっていう選択をするときに、いろいろ考えなかったんですか。ほかにも選択肢ってあるじゃないですか。

僕、実家が鹿児島市なんですよね。

あー、そうなんですか! 近いんですね。それは大きいですよね。

はい。そうなんですけど、ただそれよりも僕は、何ていうんだろう、とにかくこういう離島みたいな「特殊」なところで働きたい気持ちが大きかった。

「特殊」というのは? 何をもって特殊なんですか?

他の人がやらなそうかどうかってこと。離島っていう場所もそうですけど、仕事内容も、自分でなくてもできると思えてしまう場所では、なんかモチベーションが上がらなそうだなと思ったんですよ。離島って、言っても、実際はそんなにポンとは来れないじゃないですか。「何で?」って聞かれるぐらいですから。そういうところで僕はやりたかったんですよね。

需要は大きいですもんね。ライバルも少ないでしょうし。

まあ、それを考えて来たわけじゃないんですけど。そういうのを考えたとしても、僻地とか離島のほうがいいと思ったんですよね。なんていうか、レアキャラ目指したほうが、モチベーション上がらないですか? 自分の代わりなんてたくさんいるって思って働くよりも、「俺しかいない、俺がやるんだ」って思って働くほうが、熱いと思いません?

そうですね。

熱い気持ちになれるじゃないですか? 冷めた感じで仕事したくないんですよ。9時18時で終わり、はい明日も同じ、毎日単調な感じの生活。とか、そういうのは、僕はつまんないなって思うんですよね。

種子島で、できるコト・できないコト

種子島宇宙センター。「世界一美しいロケット発射場」とか言われてるらしい

種子島宇宙センター。「世界一美しいロケット発射場」とか言われてるらしい

田中さんが考える種子島の魅力、あるいは、ダメなところみたいな話を伺ってもいいですか。

まずやっぱ田舎だから家賃が安い。ちゃんと調べたことないから分からないですけど、例えば月10万円出すとして、都会と離島で比較したら、都会だったら賃貸で1LDKとかじゃないですか。こっちだったら、全然もっと広い家買えますからね。

そうなりますよね。

それを、たとえば自分が離島に飽きたらどっかに引っ越して、家は誰か別の人に貸してもいいですし。

できるんですか? そんなこと。

できると思いますよ。実際にやってる人の話を聞いたことありますから。あと、僕の知り合いでも「やりたい」って言ってるやつ居ますし。ほら、民泊とかいま流行ってるじゃないですか。それこそ、サーフトリップで島に来てる外国人に貸すとか、良いんじゃないですかね。知ってます? 種子島って、世界的にもめっちゃ良いサーフポイントなんですよ。

え、そうなんですか? それは知らなかったです。

まあ、僕サーファーじゃないからよく分かんないんですけど。良いらしいっすよ。実際その辺、サーファーだらけだし。

意外ですね。正直、宇宙センターのイメージしかありませんでした。

外国人もいっぱい居ますよ、その辺のバーとかに。行きます? 今から。だからほら、ちょっと頑張れば国際交流チックなことができちゃうわけですよ。

それホントですかぁ? ちょっと盛ってません?

いや、できるできる。全然できるって。だから行こうよ後で。一緒に世界、羽ばたいていこうよ。

……え?

もちろんアレだよ? 普通に英語でしゃべらないとダメだからね? そういう前提のもとで、頑張って話せばってこと。

なんか、本当にポジティブですよね。

なんだろう。まあそうなんだけど、俺は普通に種子島めっちゃ良いと思ってるだけなんだよね。だってさ、あの満員電車ってあるじゃん。絶対大変じゃない……?

まー、大変ですよね。僕の知り合いでも、電車乗りたくなくて会社辞めたってやつ何人か居ますから。

でしょ? こないだ読んだビジネス書にさ、朝早い時間に家を出れば列車は満員じゃないから、そこで朝活できます、とか書いてあったわけですよ。いや、ちょっと待て、と。電車なんか乗らないで、車で通勤すればいいじゃん!

やっぱ車なんですか。

うん、車。車だったらぜんぶ俺の空間だからさ。爆音で音楽鳴らそうが、「ちっくしょー!このブタ野郎がー!!」とかって絶叫しようが、誰にも聞かれないからね。

いつもそんなことしてるんですか。

いや、例えばの話ね。ていうかごめん、種子島に電車なかったわ……。

田中さんが通勤で毎日通ってる道。これが15分くらい続きます。

田中さんが通勤で毎日通ってる道。これが15分くらい続きます。

どういう人は離島に向いている、とかってありますか?

アクティブな人は絶対に良いと思う。例えばだけど、そうだな……朝は波に乗って、昼はバリバリ仕事して、夜は海辺でバーベキューして、ビール飲んで寝る、みたいな感じとか。どう? イケてない?

あの、絶対そんな人いませんよね。

いやいや、居るって! まあ、さすがに毎日バーベキューはしないよ? それはたまにで良いと思うけど、でも毎朝サーフィンしてる人なんていくらでも居るよ。

田中さんはどうなんですか? 休日とかは普段、何してる感じなんですか。

俺はバスケとかしてる。スポーツだったら、離島だから今言ったサーフィンする人はもちろんいっぱいいるし、マリンスポーツだけじゃなくて球技もできるよ。バスケとかバレーとか。あと、ランニングもめっちゃ気持ちいいし。

飲みとかは行かれますか? 飲む場所がけっこう限られるんじゃないかってイメージがあるんですけど。

ここみたいな居酒屋とか、スナックとかは普通にあるよ。ただ、例えばクラブとか、そういう夜遊びみたいなのがしたいってなるとさすがに難しいね。でも、仕事帰りにちょっと飲んで帰ろう、みたいなのは全然できる。

なるほど。無くてツライ!みたいなのって何かありますか? 種子島に住んでて。

あれ、すた丼と二郎がない。これはちょっと寂しい。学生の頃、めちゃめちゃ通ってたんだけど。でも俺、友達がたまに冷凍すた丼を送ってくれるんだよね。だから結局、すた丼も食えるから大丈夫。

えっ、すた丼って冷凍なんてあるんですか、あれ。

あるよ。すた丼の店に行けばギフトセットみたいなのがあるし、通販でも売ってるからさ。だから冷凍で良ければ、すた丼も食える。二郎はさすがに食えない! 二郎は無理だと思ってる。二郎をどうしても毎日食いたいみたいな人だったら種子島は無理かな。それ以外の人は大丈夫だと思う。ファミレスはあるし、飲み屋もあるし。そもそもさ、そんなに毎日外食しなくない? ランチとかもそんな行く?

いや、僕はランチ普通に行きますけどね……他に無いのってありますか?

映画館もないね。でもTSUTAYAはあるから。「君の名は。」見たよ、ちゃんと。

マジですか。僕、まだ見てないですよ。笑

俺、自宅でBOSEのスピーカー買って見てるから、音もいいし。なければ自分ちに作ればいいんだよ、環境を。

田中さんのスピーカー。本当は居間の全景が欲しかったんですが、奥さんに却下されたそうです。笑

田中さんのスピーカー。本当は居間の全景が欲しかったんですが、奥さんに却下されたそうです。笑

あとボウリング場。昔はあったけど今はない。カラオケはある。だから街で遊べるようなものはあんまりない。けど自然はめちゃくちゃある。釣りとか良いよ。釣りがめっちゃ好きな人は、毎日行ってるよ本当に。朝、港でイカ釣ってから出勤するとかしてる人いるし。

そうか、釣りって朝ですもんね。

そうそう。宅飲みとかするとさ、いきなりイカがバンって刺身で出てくるの。今朝釣ってきたわーみたいな感じで。あとたまにカニとかくれたりするよ、患者さんが。

カニが採れるんですか?

そう。昔ね、俺、透析の患者さんを持ってたときがあって。西之表の店舗にいたときに、半年ぐらい担当してたのよ。で、2年目のときかな? いきなりくれたの、カニを。「いつもありがとう、今日とってきた」って言って。あれ……すいませんこれ何の話でしたっけ?

いや、種子島では出来ないことって話ですけど、もういいです。笑

種子島でのお仕事ぶりについて

のぞみ薬局・公立病院前店。奥にあるのが公立種子島病院

のぞみ薬局・公立病院前店。奥にあるのが公立種子島病院

ずっとおひとりなんですか、仕事。

そうですね、ここ4年ぐらい1人です。ただ、島の北側にある西之表の店舗からときどき応援をもらってるんで、それを入れるとだいたい1.5人くらいですかね。基本は僕1人ですね。

お忙しいですよね。

めっちゃ忙しい。ほんと、昼メシとかおにぎり2個パッと食って終わりですよ。仕事量はかなり多い。電話もすげー掛かって来ますし。でもやりがいはありますよ。患者さんも、僕が1人で忙しいの分かってて待っててくれるんですよね。まあ、それが良いか悪いかは別なんですけど。

処方箋って、1日何枚ぐらいなんですか。

それは普通に35から40くらいですね。ただ、患者さんとか、その周りの方とのコミュニケーションが増える分、仕事が大変になるって感じ。そこは多分、都会の薬局とかとは違うところですかね。

なるほど。1人だと、休みとか取りづらくないですか?

いや、それは無いかな。応援があるんで。例えば、鹿児島に出張に行くときなんかは、お願いして午後から来てもらうとかしてますし。島にガチで1人しか薬剤師が居ない、みたいな離島だったらちょっとキツイかもしれないですけど、種子島はそうじゃないですからね。

訪問もやられてるんですか。

やってますよ。ただ日中は行けないから、基本、仕事が終わってからになりますね。店閉めて夜行ったりとか、土曜日に昼から行ったりとか。

1人で訪問もやられてるんですよね。本当にめちゃくちゃ忙しそうですね。

まあ、訪問はそんなに数は多くないですけどね。3人とか4人とかですし。

店舗の中はこんな感じ

店舗の中はこんな感じ

田中さんって、離島ファーマシストネットワークっていう、離島薬剤師についての情報発信をする活動もされているじゃないですか。あれは、どうしてやろうと思ったんですか。

あれはね、最初は「離島って最先端だよね」って話から始まったんですよ。

最先端、というと?

いま国が、「地域に出ていきましょう」とか、「なんでも相談できる薬剤師を持ちましょう」とか言って、広めようとしてるじゃないですか? あれって、離島ではもう普通にみんなやってることなんですよね。だからその、僕らがいま普通にやっていることを発信していくことで、世の中の役に立つんじゃないかってことで、始まったんです。

離島の薬剤師さんが「普通に」やられていることっていうのは、もうちょっと具体的に言うとどういうことなんですか?

例えば今日も来たんですけど、ケアマネージャーさんとかヘルパーさんとかから「こういう患者さんがいて、こういう薬飲んでてこういう状態なんですけど、これって薬の副作用なんですかね、どう思います?」とかって電話が来るんですよ。あと他にも「薬がこういう状態なんですけど、まだ使えますかね」とか、「これ飲ませていいんですか」とか「どうしても食後じゃないといけないんですか」とか。

そういうご相談に毎回乗っているってことですか。

そう。あとは、患者さんからも電話が掛かってくる。

患者さんからはどんなご相談をされるんですか?

これ、ちょっと前に実際にあった話なんですけど、卵かけご飯がめちゃめちゃ好きなおじいちゃんがいて。で、あるときご家族から朝電話が掛かってきたんですよ。なんだろうって思ったら、ワーファリンって薬、分かります? 納豆とか青汁とかクロレラとかと一緒に飲むと、効果が下がっちゃう薬なんですけど、その話が頭に残ってたみたいで。

はい。

で、そのとき電話で「おじいさんに卵かけご飯を食べさせたいんですけど、それにほんのちょこっとだけ、オクラを入れたいって言ってるんです。オクラって、入れたらダメですか……?」って言われて。

めっちゃ可愛いじゃないですか。

そう。僕が「ほんのちょっとだったら大丈夫ですよ」って言ったら「そうか〜!よかった〜!!」って、すっごい喜んでくれて。まあ正直、なかには僕らからしたら、そこまで気にする?っていうような話もありますよ。でもそれは僕らが知識があるから分かるだけで、普通は分からないですからね。ほら、89歳とかのじいちゃんだったら、食事制限ってかわいそうじゃないですか。価値観にもよるとは思いますけど。

今おっしゃっていたやりとりっていうのは、一般的には無いんですか?

どうなんですかね、一般的なところで働いたことがないから分からないんですけど。でも、こうやって珍しがられて取材が来るっていうことは、今それが一般的じゃないからじゃないんですかね……。

それって、一般の現場では、ケアマネさんが薬で分からないことがあったとしても、薬剤師さんにそれを相談をしたりはしない、ってことなんですか。

したいけどできないっていうのもあるだろうし、ただ単に面倒だからしないっていうのもあるだろうし。でもこれは信頼じゃないですか? 信頼されてないってことですよね。そのケアマネさんの中で「これ誰に聞けばいいんだろう?」ってときにパッて思い出してもらえていないってことは、ただそれだけの関係だってことなんですよ。

めちゃくちゃ忙しそうです

めちゃくちゃ忙しそうです

素朴な疑問なんですけど、田中さんがケアマネさんからそういうご相談をされるっていうことは、田中さんはそのケアマネさんと前もって関係構築ができているからそうなるんですよね。その関係って、どのタイミングでどうやって……。

作ったかってこと? そんなの、そのケアマネさんにこっちから電話すればいいだけじゃないですか。「うちの患者さんでこういう人がいるんですけど、今どういう状態なんですか?」って。それで、今そのケアマネさんが把握している情報をもらったり、逆にこっち側で持ってる情報もあげたり。そういうの繰り返してれば、自然と関係はできていきますよね。

そのケアマネさんの連絡先は、どうやって手に入れるんですか?

まず、担当のケアマネさんどなたですか?って、患者さんに直接うかがう。で、担当の方が分からないっていう場合は、役場に問い合わせる。

……それ、いつもやってるんですか?

そうだよ。もちろん、何で聞いたのかもちゃんと言わないとダメですよ。基本、ギブアンドテイクだから。

すごいですね。それって正直、別にやらなくてもいいことじゃないですか。お金とかだけ考えれば。

うーん……それって、処方箋をもらって薬を出すのが薬剤師って思われてるから、そういう文化になってるだけだと思うんですよ。だから、みんな「情報を取る」という意識があんまりないんじゃないかな。あくまで僕のイメージですけど。何でも質問すればいいと思うんですよ、分からないんだったら。

なんとなく、気持ちは分かりますけどね。こんなこと言ったら怒られるんじゃないかとか、電話するのちょっと恥ずかしいし嫌だな、みたいな。

僕も分かりますよ、それは。でもそれって結局、自分がかわいいからであって、患者さんのためを思って行動してないですよね。

いやー、手厳しい! でも、おっしゃる通りですね。

怒られるとか、あーだこーだ言われるんじゃないかっていうのは、自分がそれを言われるのが嫌なだけですよね。じゃなくて、本当にその患者さんのことを思ってるんだったら、仮にそういうことを言われたとしても、何か情報を引き出そうとか、思うはずじゃないですか。と、僕は思いますけどね。

なるほど……「最先端」の意味がだいたい分かりました。

僕らからしたら普通なんですけどね。たぶん、離島とか僻地ってみんなそんな感じだと思うんですよね。

友達に離島への転職を相談されたら、何て言う?

島の南側で撮影した日の出

島の南側で撮影した日の出

田中さんって、リファネットでの情報発信をされてるのもありますし、たぶん他の薬剤師さんたちから、離島で働きたいんだけど〜〜みたいな相談をされたりすることが結構あるんじゃないかと思うんですよ。

そうですね。

そういうとき、だいたい何て返すんですか?

働けばいいんじゃない?って言います。働きたいんだったら働けばいいじゃんって。僕って、性格がこう……バンッ!バンッ!って感じなんすよ。

あの、なんとなく分かるんですけど、もうちょっと分かるように言ってもらってもいいですか。笑

やりたいんだったらやればいいし、やりたくないならやらなければいい、って思うんですよね。中間でふわふわしてるのが苦手というか……結局、どっちなの?みたいな。だから、「働きたいんです」って言われたら、「働けばいいじゃん」っていつも言ってます。

それ、相談される方からは何て言われるんですか?

いや、でも……とか言われますよね、大体。そしたら、働きたいんでしょ? じゃあ、働けばいいじゃん、って。特に深くは考えてなくて、素直に自分のやりたいこととか、楽しそうだと思うことをしようよ、ってだけなんですけどね。

みなさん、何で迷われてるんですか。

彼女が〜、とか、家族が〜、とかが多いかな。遊びが〜、とかはあんまり聞いたことがないですね。

何で離島に行きたいんですか、その人たちは。

なんか楽しそうだからじゃないですかね。あと、離島で働くってちょっとカッコいいかも、みたいな人もいますし。でも、僕が「行けば良いんじゃない?」って言ったあと、実際に離島に行く人って、あんまり居ないんですよね。

マジですか。

うん。なんですかね。別に1、2年とかでもいいんだよ? もっと軽く考えてもいいと思うんだけどね。それは多分、うちの業界だからとかじゃないと思う。今の自分の環境を変えるっていうのはさ、やっぱり、ちょっとワンステップいるじゃないですか。そのジャンプがみんな、できないんじゃないかな。ただそれだけだと思いますよ。

田中さんが所属している、種子島の社会人バスケットボールチーム「Skunk(スカンク)」

田中さんが所属している、種子島の社会人バスケットボールチーム「Skunk(スカンク)」

田中さんは、結婚されていらっしゃいますよね。奥さんは、種子島の方なんですか?

そう、こっちの地元の人。だから全然、結婚もできますよ。彼女だって、作りたければ作れますよ、なんなら紹介だってしますよって話だし。

僕、いま渋谷に住んでるんですけど、僕の仕事って正直どこでもできるっていうか、ネットとPCさえあればできるんで、場所に依存しない仕事なんですよ。じゃあなんで僕がいま田舎じゃなくて都会に住んでるのかっていうと、妻が住みたいって言ってるからなんですよね。

それは良いんじゃない? って、俺が判定するアレはないけど。

僕も妻も、けっこう田舎の出身なんですけど。妻は、田舎独特のあの雰囲気があんまり好きじゃないらしいんですよ。僕は都会も好きなんですけど、田舎は田舎で好きなので、妻とか、僕の実家のほうに移住しても別にいいかなと思ってるんですけど、妻が都会が好きって言ってるんで、都会に住んでるって感じです。

そういう人は、残念だけど島を出ていっちゃうよね。人間ってファミリーがいちばん大事だから、そこはお互いが良いのであれば、都会に住んだほうがいいと思うよ。だって、家族がいるのに無理して離島に来てさ、それが原因で家族がバラバラとかになったら、悲しいじゃん?

そうですよね。

だからさすがにそこまでしてっていうのは分かるけど。そうじゃなくて、「来たいっす。特に何もないっす」って人は、もうホント1回来てもらったほうが早いと思うんだよね。

あんまり関係ないんですけど、僕です。観光客は他にもわりと居ました

あんまり関係ないんですけど、僕です。観光客は他にもわりと居ました

「千座の岩屋」をご案内いただいているときの田中さん

千座の岩屋」をご案内いただいているときの田中さん

洞窟入るか!とか言ってはしゃぎ出す田中さん

洞窟入るか!とか言ってはしゃぎ出す田中さん

波にさらわれてびしょびしょになる鈴木

波にさらわれてびしょびしょになる鈴木

ほんと、ぜんっぜん薬剤師らしくないですよね。

いや、仕事はちゃんとやってるよ。笑

離島で取材させていただく薬剤師さん、みんなそうなんですよね。

ブレーキが壊れてる人が多いと思うよ。「でも……」じゃなくて、とりあえずやってみようかな、みたいな。ありきたりな言葉だけどさ、やらなくて後悔するよりやって後悔したほうが良いって言うじゃん。ホントそうだと思うんだよね。そっちのほうが人生楽しいと俺は思う。

想像の3倍ぐらい熱い人でした。

よく言われる。

本当ですか。

うん。やけどするって。

笑。そろそろ締めなんですけど、最後に何か言いたいこととかありますか?

そうだな……うちの薬局、種子島にあるんですけど、もし「離島で働くってどうなんだろう?」とかちょっと興味がある方は、気軽に見学とか来ていただければと思います。あと、突撃とかじゃなくて事前にご連絡をいただければ、僕が相談に乗りますし、島のご案内とかもしますんで。

良いですね。完璧です。

よし。じゃあ、行く? 次。俺、まだ喋るから。もうね、話したいことが山ほどあるんよ。

えーっと……はい。笑

あとがき

田中さん行きつけのラーメン屋。もうだいぶ出来上がってます

このあと、話に出ていた近くのバーに行って、〆のラーメン屋に行って。薬局経営の話とか、政治家カッコイイよねって話とか、教育の話とか、なんかよく分かんない絵本の話とか、薬剤師になろうと思ったきっかけの話とか、もろもろの話をず〜っと伺っていたんですが、本当にものすごくよく喋る方で、あとで音源の文字起こしをしたら、ぜんぶで6万文字くらいあって、編集するのが大変で死ぬかと思いました。

種子島の雑感ですが、想像していたよりも良かったです。

まあまあ大きい島なので、離島って言えるのかなー?とはじめは思っていたんですが、島をぐるっと走ってみた感じそこまで栄えているわけではなく、かといって田舎すぎるわけでもなく、丁度いい感じの離島ぐあいですね。調剤薬局も10店舗強ほどあり、他の薬剤師さんもそこそこ居ますし。あと、九州本土まで高速船を使えば1時間半で行ける距離にあるというのも大きい。

個人的に一番気に入ったのは、さきほど写真で紹介しましたが、島の西側にある海岸線の道路ですね。毎日あそこを車で走れるのは本当に贅沢だなと思います……。

すごい良く撮れたからもう一回出しとく

せっかくだからもう一回出しとく

なお、取材の趣旨とはちょっとズレますが、じつは取材の途中、田中さんのご厚意で、種子島宇宙センターからのロケット打ち上げを間近で観測できる機会に運良く恵まれまして、その様子も動画に収めてきましたのでよろしければご覧ください。

最後の方にちょっと田中さんが映っています。種子島に住んでると、ときどきこういうのも見ることができちゃいますよ。地元の方も一緒にみんなで盛り上がってて面白かったw

田中さん、ありがとうございました〜〜〜!

日本版GPS衛星「みちびき」3号機を積んだH-IIAロケット35号機。良いもん撮れたわ……。

著者プロフィール

鈴木 裕也(すずき ゆうや)

Webディレクター、ライター。当サイト「SHIMA SHIMA」の立ち上げや、「ドラおじさんの薬剤師・転職相談室」の運営など。愛知県豊田市のスーパー山奥で育ちました。大学進学のときに上京しまして、今は東京で妻・息子3歳・娘1歳の4人で暮らしつつ、小さい会社をゆるゆる運営しています。