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しましま体験談

利尻島で働いていた薬剤師・ジャジャマルさん「このままだと薬局を閉めることになるかも、と言われて……」

今回は、北海道・利尻島の薬局で勤務経験がある薬剤師、ジャジャマルさんに取材を行いました。みなさん、利尻島ってどこにあるか分かります? ここですよ↓

日本最北端の地、宗谷岬がある稚内のすぐ西にある離島です。やばくないですか? こんなところにも、薬剤師さんが働く場所がちゃんとあるんですよ。

利尻島

利尻島の全景。雪とか、見るからにヤバい(Wikicommonsjoker [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

利尻島は、厚労省の統計から何人かは薬剤師さんが働いていることが分かっていたので、いつか取材コンテンツとして扱いたいなあとずっと思っていた島でした。が、行ったことがある人に巡り合うのがまず難しいだろうなあ……と思っていたところ、今回、運良く出会うことが出来たというわけです! なのでご連絡いただけたときは、嬉しくて小躍りしましたw

しかもジャジャマルさん、こんなヤバそうな地になんと新卒後すぐに行かれたとのこと。何故!? どうしてそんな無茶をしたのか? そして、その後なぜ利尻島を出ることになったのか? そのあたりを詳しく聞いてみました。

プロフィール

ジャジャマルさん

利尻島の薬局で勤務経験がある薬剤師。30代前半、男性、ご出身は岡山県。現在は、地元・岡山の調剤薬局に勤めて5年。1年前からは管理薬剤師もやっているとのことです。

なんで利尻島で働いていたんですか?

――新卒ですぐに利尻島に行かれたというのは非常に驚きなのですが、新卒ですと、急性期病院や大手調剤薬局など、他にもたくさんの選択肢があると思います。そういったなかで、なぜわざわざ利尻島で働くことを決められたのでしょうか? 理由や経緯を教えて下さい。

最初のきっかけは、大学時代に所属していた研究室の教授の後輩で、利尻島の薬局で薬剤師として勤務されている方のところに研究室旅行で訪問しに行ったことです。

その研究室では毎年、教授の知り合いやゆかりのある土地に旅行に行くのが定番になっていたんです。大学5年生の夏期休暇のときのことで、僕は当然、初めての利尻島への上陸でした。宿泊は教授の後輩の家に3泊させてもらって、島を案内してもらったり、バーベキューをしたり、薬局を見学させてもらったりしました。

利尻島の人口密集地の1つ、鴛泊(おしどまり)市街地。動画:北海道ファンマガジン様より

薬局は、当時はその後輩の薬剤師さんと、もう1人パートの方が働いているだけの小さな薬局でしたが、常に患者さんはいるような薬局でした。小さな島でも本土と同じような感じなのだな、というのが当時の印象で、島での旅行は「楽しかった」というだけで終わっていました。

その1年後、6年生の10月ごろに教授から研究室に呼び出されて、「利尻島の薬局からオファーが来てるんだけど、卒業したら働いてみない?」と突然、言われました。後輩が病気で働けなくなりそうで、パートの人だけだと時間が限られるし、このままだと薬局を閉めることになるかもしれない。次の人が決まるまでの間でいいから、行ってもらえないか?と。

びっくりして、その時は一旦、返事は保留にしました。しかし次第に、以前に島で関わった人たちが困るだろうな、自分が行って助けてあげたいなという気持ちになってきて、「次の人が決まるまで」という条件で働くことを決めたんです。

――なるほど。しかし、とはいえ「利尻」です。ほとんど1人薬剤師に近い状況でしたでしょうし、他にも選択肢があるなか、新卒で利尻に飛び込むというのは非常に勇気のいる決断だと思います。ご実家も遠いですし……。なぜそのような選択ができたのでしょうか?

もちろん迷いました。

ただ、自分がやらないなら、おそらく誰もやらないだろうし、誰もやらないなら、お店は閉まってしまい困る人がたくさんいるだろう。それを見捨てるのが、医療人として取るべき行動なのか? ここでやらなかったら、それをずっと後悔するのではないか? そう思うようになったんです。

当時いちばん葛藤していたのは、行きたい気持ちはあるものの、実務経験がまったくない自分の力で島の人たちの役に立てるのか? 薬局がまわるのか? ということでした。

でも、一度でも人を見捨てるような選択をしたら、これから先もそういう薬剤師人生を歩むことになるんじゃないか? その方が怖くなってきて、最終的には利尻島に行くことを決断しました。

給料とかってどんな感じなんですか?

――利尻島に就職された際の条件提示はどのようなものでしたか。

新卒では破格の、600万円でした。

――給与以外の、家賃補助、転居費用などはいかがでしたか?

家賃は薬局の借り上げという形だったので自己負担は0円でした。(参考までに、近くの相場は3万円ぐらいでした。)車も用意してあるものを好きに使っていいと言われていました。

また、転居費用も全額、出してくれるということでした。しかし期間が短くなるかもしれないのと、必要な家電はついてたため、僕は自分のものは何も持って行かず、全部島で調達するか、もしくは用意していただいたものを使いました。

利尻島に就職するの、不安じゃなかったの?

――利尻島で働く上で最も不安だったことや、懸念されていたことはありますか? 特に、新卒で離島に行かれたというのは何かと苦労も多かったのではと推察いたします。

まず、新卒の自分とパートさんの2人態勢というのが超不安でした。

最初のうちはパートさんもフルで入ってくれていたのですが、1か月後から1人だけの時間も増えてきて、わからないこともよくありました。ただ常に教授の後輩か、パートさんに電話がつながる状態にしてくれていたので、それで何とかなっていました。

今となっては当たり前の適応外処方なども、当時は知らなくて、疑義照会をかけて嫌味を言われたことも何度かありました。

――利尻島に来て初めて気付いた、利尻島でのお仕事の良いところ・悪いところをそれぞれ教えて下さい。

利尻島での仕事の良いところは、島民の生活のスタート時間が早いので、受診する人はとにかくみんな早い時間にまとまって来てくれていたということです。

昼過ぎになるととても暇になるので、自分の勉強の時間にしたりしていました。あと、きっちり休憩時間がとれたので、お昼もゆっくり食べられていました。これは良かったことですね。

逆に悪いところは、とにかく顔見知りの方が多いので、電話をかけてきても名前を名乗らずに「○○(地名)のわしだけど今朝の薬が……」とかいうのが頻繁にあり、最初のうちはちょっと困りました。ただ、一緒に働いていたパートさんは直接電話に出なくても、僕のやり取りだけを聞いて相手が誰なのか分かる、という特殊能力を持っていて、それにだいぶ助けられていました。

――すごいですねw なんでそんな事ができるんですか?

実はそのパートさんは、自分が新卒ということもあって、服薬指導を横からこっそり聞いてくれていて、抜けていることや「おそらくこの患者さんからは、後でこういう問い合わせがあるだろうな……」ということを事前に把握してくれていたんです。

あるとき患者さんに、便の中に白い抜け殻が出てくる薬をお渡ししたことがあったんですが、僕がうっかりそのことを説明し忘れていました。そうすると当然、「今朝の薬を飲んだら、なんか便から白いのが出てきたんだけど……」という感じで、患者さんから不安な感じで電話が来るじゃないですか。

すると、それを横で聞いていたパートさんが『今朝の薬、白いの、○○(地名)』という、僕の発した言葉と、電話が掛かってきた時間帯などをもとに推理して、相手が誰なのか的確に言い当てるんです。

――すごい能力ですね……まさに、僻地ならではという感じですね。

そうですね。その能力のおかげで、自分が新人であるにも関わらず切れ目のない素早い対応を行うことができ、患者さんからの信頼を損なわずに済んでいたというのはあると思います。

――他に、利尻島に来てびっくりしたことや、笑えるエピソードなどがもしあれば教えて下さい。

意外とロシアの方が多く来られていたことにびっくりしました。

だいたい通訳の方を連れているので、言葉に困ることはなかったのですが、あるとき、おそらく漁で来ていたロシア人の方が通訳なしで来局されたことがありました。薬の説明を何てしていいのか分からなくて困って、アプリで検索したり翻訳しようとしていたら、そのロシアの方が急かしてきたので「ちょっと、ちょっと待って、ちょっと」と日本語で言ったんです。

そしたら突然、ものすごく怒られました。後で聞いたら「ちょっと」(チョント?チョルト?)はロシア語で「畜生」や「くたばれ」という意味らしくて、それを連発していたことに腹をたてたんだそうです(笑)

ただでさえ急いでる雰囲気だったのに、さらにまくしたてるように、よくわからないロシア語で激しく言われて……少し古いのですが、トルシエ監督が怒ってるときみたいな感じでした。

――種子島では車は必要でしょうか。また、普段どこで買い物されていましたか。

車は無いと不便だと思います。バスもあるにはあるのですが、本数がとても少ないです。

食べ物はほとんどセイコマートで調達していました。組合ストアーやドラックストアもあるので、大体のものは揃います。

――最終的に利尻島を出られた理由や経緯を教えてください。

ちょうど働き始めて10か月ぐらいの時に、後任の方が決まって、引継ぎが終わったので島を出ることを決意しました。

――利尻島を出られたあとで、利尻島での勤務経験が活きていると感じる場面はありますか?

島ではなんでも自分でやらないといけないですし、自分で判断をしないといけません。そういう感じで追い込まれていたので、それが自分を成長させてくれていたのが、今も活きていると思います。

読者の薬剤師さんへのメッセージをどうぞ

――離島へき地を勤務先として検討されている薬剤師さん向けに、なにか伝えたいことがあれば教えて下さい。

もし可能であるならば一度島に行ってみて、島の方やその地域の方と触れ合う機会を持たれたほうがいいと思います。

自分も過去に渡航したことがあるため、島の状況や現地の生活をイメージすることができました。その経験が無ければおそらく踏み出す勇気はなかったと思うので、まずは見学をしたほうがいいと思います。

あとがき

▼キャリアアドバイザーのコメント

新卒だったにも関わらず、勇気のある決断をされていてすごく素敵ですね。「医療人として」という言葉からも覚悟を感じることができ、こういった薬剤師が世の中にたくさん増えてくれれば、日本の医療はもっと良いものになるのだろうと感じました。

新卒で大手調剤チェーンなどに入る場合、最初の1か月はホテルに缶詰めで徹底的に研修を行う企業もあります。また、そうでなくても大抵は研修の期間が設けられていることがほとんどです。従って、そのような環境が整っていない可能性が高い離島の個人薬局などで新卒のキャリアをスタートするのはある種「博打」に近いと言えます。ですので、僕も基本的にあまりおすすめはしていません。

……がしかし、ジャジャマルさんが後任が決まるまでしっかり業務をやり切ったことは、都心では到底得られない貴重な経験になったのではないかと思います。

おそらく、こういった難所・修羅場を乗り切った方というのは、今後の少々の困難ではまったく何とも思わないでしょうね。個人的には、また機会を見つけていただき、困っている方々のために奮闘いただき、地域医療をけん引してほしいです。

パートさんの特殊能力はすごいですねw 改めて地域に根差していないと、地域医療には貢献しにくいということを認識させられます。

著者プロフィール

鈴木 裕也(すずき ゆうや)

Webディレクター、ライター。当サイト「しましまワークス」の立ち上げや、「ドラおじさんの薬剤師・転職相談室」の運営など。愛知県豊田市のスーパー山奥で育ちました。大学進学のときに上京しまして、今は東京で妻・息子4歳・娘2歳の4人で暮らしつつ、小さい会社をゆるゆる運営しています。

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