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しましま体験談

岐阜県郡上市で働いていた薬剤師・サイコロさん「独身中は会社に勤務地を決めてもらい、旅行気分で転勤を楽しむつもりでした」

今回は、岐阜県の郡上市(ぐじょうし)で勤務経験がある薬剤師、サイコロさんに取材を行いました。

郡上市と言われてもまったくピンと来ない方がほとんどだと思いますが、日本三大盆踊り「郡上おどり」で有名とのことで、お祭りや民俗芸能が好きな方はご存知かも知れません。位置的には岐阜県のちょうど中央に位置する自治体で、温泉で有名な「下呂市」の左隣りです。人口はおよそ4万人。

うーん、この「森」って感じ。僕の実家にそっくりです

ちなみに当サイトは名前の通り、最初は離島の体験談だけを集めて公開していくサイトにするつもりでした。

しかし、募集の段階でサイコロさんから「郡上市は山に囲まれた『陸の孤島』と言ってもいい場所です。観光地ではありますが、実際に住んだ人間の印象からすると間違いなく『陸の孤島』でした! 独身にとって必須と思われる飲食系のチェーン店もありませんし……。」と力のこもったメッセージをいただいたため、島ではないにもかかわらず喜んでお取り組みをさせていただいたという経緯があります。笑

「陸の孤島」郡上市とはいったい、薬剤師にとってどのような場所だったのか? 詳しく聞いてみました。

プロフィール

サイコロさん

郡上市で勤務経験のある男性薬剤師。ご出身は愛知。薬学部卒業後、中部地方を中心に展開する某チェーン調剤薬局に勤務。透析病院前の店舗→労災病院門前の店舗→郡上市内の小規模病院前の店舗→郡上市民病院前の店舗と経験した後に、家庭の事情で退社。現在は、実家から通える心療内科門前にて勤務中。

なんで岐阜県の郡上市で働いていたんですか?

――同チェーン内での異動で、愛知県の都市部から「陸の孤島」岐阜県の郡上市の店舗に行かれたのだとお見受けしますが、これはご自身で希望されて行かれたのでしょうか? あるいは会社都合で仕方なくでしょうか?

私は学生時代、製薬会社のMR職への道も考えていました。国内の大手製薬会社のMRは、辞令次第で全国のどこに転勤になるか直前まで分からない職種です。しかし私は「独身中は会社に勤務地を決めてもらって、旅行気分で現地を楽しもう!」というスタンスの大学生でした。

ただ、将来のことを考えた時に製薬会社ではなく薬局の道を選んだのですが、もともと住む地域に拘りはありませんでした。チェーン薬局に入社した理由も同じような事が言えて、勉強しやすい環境と、店舗移動がある点を考慮して決めました。

入社後しばらくの間は愛知県内での勤務でしたが、当時在籍していた店舗の上司と考えが合わず、普段から働きにくさを感じていました。店舗内での微妙な関係は、かなり上役の地域マネージャーも知っている状況でした。

そんな折に岐阜県の郡上市で欠員が出て、私に転勤の相談が来ました。私から転勤希望は出していませんでしたが、即答で引き受けました。会社都合の転勤ではありましたが仕方なくという気持ちはなく、楽しみの方が大きかったです。郡上市についても、岐阜県のどの辺りか程度の知識しかなく、行った事もない状況でした。

給料とかってどんな感じなんですか?

――離島へき地に行かれた方には、転職したときの具体的な条件提示(年収や手当など)について必ず伺っていますが、上記の異動の際は何か見返りはあったのでしょうか。詳しく教えてください。

私はもともと会社に入る段階で「地域は選ばず、転勤の可能性あり」の枠で入社しています。

転勤のリスクが常にあり、離島へき地ではない栄えた地域で仕事をしていても、給料は高めに設定されていました。そのため、条件交渉は私の頭の中に全くありませんでした。当然、会社から上乗せの相談などはなく、同一条件での移動になります。

仮に私が一度転勤を渋って、他の適任者が本当に誰もいなければ、条件交渉が可能だったのかもしれません。しかし、大手は多少の人的余裕が常にありますし給与体系も確立していますので、それは難しかったと思います。

へき地に転職するの、不安じゃなかったの?

――郡上市の店舗に行かれる上で最も不安だったことや、懸念されていたことを教えて下さい。

郡上と聞いて私の脳内に思い浮かんだのは「冬の雪山」になります。市内に幾つもスキー場がある事を知っていたからです。

これまで住んできた場所は雪とは無縁で、雪が降る事があっても、生活する上で問題になる事など一度もありませんでした。ですので雪道での通勤や車での宅配、寒さなどは、赴任する前は生活する上で大変気になりました。

雪山の運転の様子。これは郡上市ではないですが、山は雪が降るとだいたいどこもこんな感じになります。

何より、私の当時の足はバイクだったのです。生活の足がバイクでは対応しようがない事は即、分かりましたので、泣く泣く大好きなバイクから、スタッドレスタイヤつきの車に買い替えました。

――田舎の山の雪はしんどいですからね、僕の実家も同じ感じだったので分かります……。実際に働いてみて、その点はどうでしたか?

雪道に関しては、結論からいうとそれほど問題になりませんでした。

まず住宅が立ち並ぶ街中は除雪されているため、全く平気でした。加えて、徒歩通勤が可能な場所にアパートを借りることができたことも功を奏しました。何より、毎日運転していれば思いのほかすぐ慣れました。

お一方、お薬を宅配するのに峠を越える必要がある患者様がいらっしゃったんですが、真冬にその方のお宅に伺う際だけは、運転の恐怖を感じました。ただ、頻度は少なかったです。また、そのようにかなり山奥に自宅があり宅配が困難な方には、初冬に長期で処方が出ていたため、特に問題にはなりませんでした。

唯一、冬の間ずっと苦痛だったのが「寒さ」です。

壁が薄いアパートだったこともあり、エアコンでは全く室温が上がらず、石油ストーブとコタツが必須でした。床の底冷えは想像以上で、布団越しでも冷たさが伝わってきます。また、夜中のストーブは火災の原因になるため、つけっぱなしで寝ることもできず、特に朝の冷え込みは地獄のようでした。

アパートも会社借り上げでしたので、引っ越すことも出来ず、毛布と布団で耐え忍ぶほかありませんでした。

岐阜県の郡上市ってどんなところですか?

――郡上市に来て初めて気付いた、現地でのお仕事の良いところ悪いところがあればそれぞれ教えて下さい。

良い点として何より感じたのが、現地人の「人の良さ」です。

以前に働いていた街では、薬の待ち時間が長ければ、クレームやそれに近い態度をされる事が頻繁にありました。ミスや不手際に関しても同じです。しかし郡上では、私の不手際に対して逆に気をつかってもらえたり、差し入れを頂いたり、人間の優しさや温かさを実感できる事が多かったです。

もちろん、どこにでも一定数いるクレーマーと言えるような患者さんもいましたし、「へき地」と一口に言っても地域柄があるとは思いますが、少なくとも郡上市は、いわゆる都会との違いは間違いなく実感できる差がありました。

また、職場スタッフの多くは地元の人間です。スタッフの人間性も良好でした。そのため、都会と同じ業務をしていても働きやすい環境であると感じました。

悪い点として挙げられるのは、年配者の話す一部の「方言」が分からない事です。

聞き取りにくい上に、聞いても分からないのであれば、雰囲気で何となく察して笑顔で同意するしかありません。良く使う方言に関しては後で地元スタッフに確認していましたが、投薬中に全てを理解するのは無理です。ただ、こちらの言葉は理解してもらえるので、業務としては問題になりませんでした。

――郡上市に来てびっくりしたことや、笑えるエピソードなどがもしあれば教えて下さい。

街としては観光名所も多くあり、観光客向きの食事処が幾つもあります。しかし、そういった店は高額ですし、その地に住んでいる人が一人で行ける店ではありません。店の閉店時間も早く、業務終了後の帰宅時間にはもう閉まっています。

基本的にチェーン展開している飲食店がないため、いつも夕食難民になっていました。男の一人暮らしの上に、アパートのコンロも古く、自炊する気も全く起きません。コンビニに頼る毎日です。

コンビニ弁当ばかり食べていたらいつか体を壊すと思い、スーパーに食材を買いに行くと、見たことある人が大抵います。地域にあるスーパーは限られているので、職場で「さよなら」を言った同僚とスーパーで再び会うなんて事が頻繁にありました。

また、国の重要無形文化財に指定されている「郡上踊り」のシーズンになると外が騒がしくなります。

住居の場所と、建物の防音性次第だと思いますが、私のアパートは踊りの時間になると踊りの音頭が聞こえていました。特にお盆に開催される「徹夜踊り」は名物で、郡上市の人口の何倍もの人がこの地に集まります。名前の通り朝方まで大音量が何日も続くため、休みであれば実家に避難していました。

読者の薬剤師さんへのメッセージをどうぞ

誰もが言う言葉ですが「住めば都」です。経験した私からすると「誰もが一度はへき地を経験すべき!」と心から思います。

住む場所というのは、どこに住んでも百点は有り得ません。へき地は住む前まではデメリットが多く見えますが、同じ日本ですし、実際それほど生活に困る事は無いと思います。むしろ、伝統行事であったり独特の慣習が残っている事が多く、特別な価値観を与えてくれます。

街では経験出来ないアクシデントもあるでしょう。躊躇せず、どんどん地元の行事に参加し、店を開拓する事をお勧めします。今でも当時もっと色々見ておくべきだったと頻繁に思います。

一度へき地を経験すると、人間としての視野が広がり、その後の人生の糧となります。永住する前提でなければ、ですが、心から楽しめる貴重な期間になると私は思います。

あとがき

▼キャリアアドバイザーのコメント

「独身中は会社に勤務地を決めてもらって、旅行気分で現地を楽しむつもりだった」とのことですが、素晴らしいスタンスですね。「欠員で困っている=そのエリアの患者様が困っている」ということなので、こういう方はただ気の赴くままに異動をするだけで、そのまま地域医療に貢献できてしまいます。

なお、異動時の条件交渉は考えていなかったとのことですが、内密に伺っている所属先の企業は、金払いは良い会社なので、交渉をすればそれなりの手当は獲得可能だったのではないかと思います。

冬の雪道での峠越えは怖そうですね。山越えがありうる店舗での勤務を嫌う方も一定いらっしゃるので、この方が異動してくれて、会社は本当に助かったと思います。

実は、寒いエリアで勤務するときに最も大切なのは、住居環境を整えることなんです。特にわたしが雪国への紹介斡旋を行う場合で、かつ、紹介先の企業が「指定したアパート等に入居してもらう」というルールになっている場合、「指定されたアパートではなく、住む場所を自分で決めさせてもらえないか」と交渉をさせていただくことが多いです。

これがなぜ大事なのかというと、結論、雪国ならどこに住んでも寒いことに変わりはないのですが、「家を自分で決めた」という納得感があるのと無いのとでは、企業に対する不満の抱きやすさに圧倒的に差が出るからです。自分で家を決めた納得感があれば、スキマ風が……などの多少の不満は目をつぶることができるので、結果的に長く勤めてもらいやすくなるメリットが企業側にもあるというわけです。

「誰もが一度はへき地を経験すべき!」とのことですが、永住する前提ではなく期間限定と捉えて、その環境を楽しむスタンスを持っていると、本当に充実するのだなあと思いました。

こういった方はその後の人生もキャリアも充実するんだろうと思います。「その場や眼の前のことをポジティブに捉える=機会を活かせる」人はどんなことでも自身の糧にできるので、人生も豊かになるでしょうし、ビジネスパーソンとしても頼もしい方なのだと思います。

著者プロフィール

鈴木 裕也(すずき ゆうや)

Webディレクター、ライター。当サイト「しましまワークス」の立ち上げや、「ドラおじさんの薬剤師・転職相談室」の運営など。愛知県豊田市のスーパー山奥で育ちました。大学進学のときに上京しまして、今は東京で妻・息子4歳・娘2歳の4人で暮らしつつ、小さい会社をゆるゆる運営しています。

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